ヴァイオリン協奏曲といえば、メンコン、ブラコン、べトコン、そしてチャイコン! その中でチャイコンは、メロディアスで、分かりやすいため、クラシック聴き始めたばかりの初心者には特におすすめできる曲です。
この記事ではそんなチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲について聴く前に知っているともっとこの曲が楽しめる曲の背景&曲解説と、チャイコンファン歴13年の私が思うこの曲の聴き所をご紹介します。
チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲の背景をご紹介
チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲は、メンデルスゾーン、ブラームス、ベートーヴェンのものと並ぶ出来のヴァイオリン協奏曲として、よく「4大ヴァイオリン協奏曲」と呼ばれています。
チャイコフスキーの作品の中でも傑作のひとつに数えられ、色んなヴァイオリニストによって演奏・録音されています。
でも、実は作曲された当時は、誰にも理解されなかったんです。
チャイコフスキーは初演してもらおうと、当時の大ヴァイオリニストであるアウアーに楽譜を送りました。
しかし楽譜を読んだアウアーは「演奏不可能」といって、初演を拒否します。
そのため、予定されていた初演はキャンセルされました。
そんなこともありこの曲はしばらく放置されます。
結局初演されたのは作品が出来てから3年後です。
でもまだ試練は続きます。
初演はロシア人ヴァイオリニストのブロツキーが独奏ヴァイオリン、ハンス・リヒター指揮、フィーン・フィルの演奏で行われました。
しかし、独奏ヴァイオリンのブロツキー以外、つまり指揮者・楽団員はこの曲が好きではなかったようで、曲を理解しないまま演奏しました。
結果は当然芳しくなく、特にとある批評家には「悪臭を放つ音楽」とまで言われる始末です。
それでも、めげなかったのがブロツキー。
ブロツキーはことあるごとに、この曲を演奏してくれました。
その結果、次第に受け入れられるようになり、初演拒否したアウアーも演奏するようになったようです。
その後は、今でも名を残す多くのヴァイオリニストたちによって演奏され、数多くの名演が生まれました。
そして今の評価につながっています。
「ブロツキーさん。あなたがいなければ私たちは今こうしてこの曲を楽しむことはできなかったかもしれません。本当にありがとうございます」
チャイコフスキーヴァイオリン協奏曲の簡単曲解説
ここからは楽章ごとに曲の解説をしていきます。
各楽章ごとに冒頭でおおよそどんな曲かまとめたので、「どんな曲か知りたいだけ」って方はその部分だけでもいいかもしれません。
その後に楽譜に沿って細かく解説します。
解説で曲のつくりを簡単に知っておくと曲の聞こえ方も変わってくるのでぜひ読んでみてください。
第1楽章:Allegro moderato – Moderato assai
演奏時間は18分程度で全曲のうちほぼ半分を占めます。
歌うような美しいヴァイオリンの音色、ヴァイオリンの技巧、そして真ん中あたりでは華やかなオーケストラのメロディーそのすべてが詰まっています。
非常に聴き易いのでクラシックを初めて聴く方でもすんなり楽しめると思います!
Allegro moderatoの序奏は、第1ヴァイオリンのみによって演奏される優雅なメロディーで始まります。 このメロディーは、この形では二度と登場しません。
その後、弦楽器による第1主題の断片と、木管楽器による冒頭のメロディーが交互に3回ずつ演奏されます。
そして、第1主題の断片のみが残り、序奏が終わります。
◇聴き所①
曲の大事なメロディー(第1主題)が、序奏のメロディと掛け合いながら、最後はこっちが大事だよって感じで第1主題が残るんです。
そして、独奏ヴァイオリンによる5小節の短いカデンツァの後、主部のModerato assaiへ。
弦楽器の伴奏に乗って独奏ヴァイオリンがゆったりと優しく優雅に第1主題を提示します。
◇聴き所②
第2主題も独奏ヴァイオリンによって提示されます。 この第2主題はここまでの雰囲気を変えるもので、抑えきれない感情があふれ出てくるようなメロディーです。
そして展開部、オーケストラが第1主題を強奏します。 とても華やかな部分です。
◇聴き所③
その、華やかさを保ったまま、一度独奏ヴァイオリンに主導権が移り、華やかに主題が展開されていきます。
再度オーケストラによる第1主題の強奏を挟みカデンツァに移っていきます。 カデンツァが展開部と再現部の間に置かれているのがこの曲の特徴です。
カデンツァの終わりとともに、再現部に移り、まずはフルート、そして独奏ヴァイオリンに受け渡される形で第1主題が再現されます。
第2主題もソナタ形式の型どおりに再現されます。
そこからクライマックスへ向けテンポが上がっていき、コーダへ。
最後は独奏ヴァイオリンが華やかさと技巧をみせながら、力強く楽章を締めくくります。
第2楽章:Andante
「カンツォネッタ」とは小規模なカンツォーネと言う意味で、つまり思いや感情の歌です。
緩徐(ゆっくり)楽章で全体的に哀愁漂う雰囲気であり、美しい音楽です。
出だしは感情少し抑えめの悲しげなメロディーですが、真ん中あたりにあふれる感情を感じるメロディーも出てきます。
静かな木管楽器の序奏に続いて、ミュートをつけた独奏ヴァイオリンが哀愁漂う美しいメロディーを奏でます。
◇聴き所④
本当に心にしみる音楽となっています。
中間部はメロディーに少し動きも出て、多少明るめな印象となり盛り上がりをみせます。
そしてまた冒頭のメロディーへ戻っていきます。 最後は、木管楽器と弦楽器によって静かに締められて、そのまま音楽が切れることなく第3楽章へ突入します。
第3楽章:Allegro vivacissimo
とにかく勢いが凄いです。
ヴァイオリンの細かい動きは技巧的で演奏技術も楽しめます。
曲の終わり方も勢いのまま突っ込んで終わりでテンションをあげてくれるノリノリの曲です!
その後、独奏ヴァイオリンのカデンツァをはさんで、飛び跳ねるような第1主題が技巧的に独奏ヴァイオリンによって示されます。
しつこいぐらいにこの主題が繰り返されるので、昔はカットして演奏されることもありました。
◇聴き所⑤
また、しつこさがいいところだとも思うんですけど、確かにカットされているとすっきりする印象もあります。
お好みで、できればどちらも聴いてみてください。
第2主題はテンポ落とし、引きずるようなメロディとなっています。
この第1主題と第2主題が繰り返されて終結へと向かっていきます。 最後は第1主題から流れ込むようにコーダへ入り、熱狂的な盛り上がりを見せ終わります。
◇聴き所⑥
華やかなこの曲の最後にふさわしい最高の締め方です!