チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲は本当に名曲ですよね!
名曲だからこそ色んな演奏を聴いてみたくはなりませんか?
チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲は本当に様々なヴァイオリニストの録音が残されており、名盤と呼ばれる演奏もいくつもあります。
そのため、色んなクラシックファンの方がおすすめのCDをご紹介していますよね。
そうなってくると「ありすぎてどれを聴けばいいのか分からない」となってしまう方もいるはずです。
この記事では「こんな方にはこの演奏がおすすめだよ」という形で名盤をご紹介していきます。
みなさまのベストを見つけるのに少しでも役に立てば幸いです。
第1楽章聴き比べポイント
ここからは、第一楽章の聴き比べポイントを挙げていきます。
少し細かい部分ですが、聴き比べの際に参考にしてみてください。
dakosukeおすすめの演奏をご紹介
演奏技術に支えられたクセのないスタンダードな演奏・・・シャハム
高いテクニックに支えられた、素晴らしい演奏です。
また、若いころの録音ということもあって、流れてくる音楽は若々しく元気はつらつな音であふれています。
また高音の鳴りは華やかで、気持ちよく抜けていきます。
演奏は楽譜に忠実で、変な味付をすることなくしっかり弾ききっています。
ただ、理知的というよりは感情的な面もあり熱いです。
①序奏のテンポは一般的な速さ~気持ち遅め。
譜例1の部分、弦楽器は若干、木管楽器ははっきりと音符間の隙間があり、1音1音の発音がはっきりしています。
そのため譜例2でも、1stヴァイオリン・オーボエの対比が甘い気はします。
ただしその分スムーズに音楽が流れています。
独奏ヴァイオリンへの受け渡しは最後に若干リタルダンドでテンポを落としています。
②第1主題提示は落ち着いたテンポと音色で弾き始めています。
徐々にテンポを上げ、譜例3はスタッカートで明るく元気な雰囲気になります。
繰り返しは明るく華やかで主題提示とは雰囲気が異なっています。
③第2主題までの経過部は早めのテンポで技巧的に駆け抜けていきます。
譜例4も若干テンポを落としてはいますが、正直気づかないレベルです。
第2主題直前はリタルダンドをかけ、そのテンポで第2主題に入っていきます。
④かなりゆったりめのテンポでロマンティックに歌い上げています。
特に高音部分はぎゅーっと締め付けられるような感じの音色です。
⑤展開部に向け勢いを取り戻していきます。
譜例5ではテンポを上げず落ち着いて1フレーズ1フレーズ弾いています。
譜例6でガッとテンポを上げて、そのテンポのまま展開部直前まで突っ込んでいきます。
⑥直前までの独奏ヴァイオリンの勢いからはテンポを落として展開部が始まっています。
少しスムーズさに欠けていて違和感が多少あります。
オーケストラの演奏自体は迫力もあり、「ここが好き!」という方も満足できるかなと思います。
譜例7の部分、出だしをすごいタメます。
また円で囲った部分ですが、1つ目は下の重音を弾き直すようにタメを作り、2つ目はメロディーが跳ねるように聴こえる弾き方をしています。
⑦フルートはしっかり聴こえますが独奏ヴァイオリンが主役といった感じです。
譜例3は提示部と違い再現部ではレガートです。
また、第1主題の繰り返し部分は提示部に比べると落ち着いた雰囲気です。
ロマンティックな第2主題も、ごてごてとしずぎないちょうど良いバランスで、気持ちが良いです。
終楽章は、落ち着いたテンポでしっかりと1音1音もらさず弾いていて、「ほんと上手いな」といつも思います。
お手本のような演奏じゃないかと思います。
ごてごてした装飾のない明るく華やかな演奏・・・スターン
明るく華やかなスターンのヴァイオリン。
オーマンディ&フィラデルフィア管の伴奏は豪華絢爛で、まさに「フィラデルフィア・サウンド」。
スターンのヴァイオリンはとても明るく華やかで、いい意味でチャイコフスキーらしさを感じさせない演奏です。
それに合わせるように、伴奏もとにかく豪華絢爛でチャイコフスキーのすばらしいメロディーをストレートに味わえます。
テンポ設定はとても自然で、スムーズに音楽が流れていきます。
それはオーマンディの伴奏も同様で独奏ヴァイオリンとの受け渡しがスムーズです。
それでいて淡白というわけではなく、とても熱い演奏だと思います。
この年代では珍しいと思いますが、アウアー版なのは「①1楽章再現部のオーケストラのカット、②3楽章のカット、③3楽章後半部分主部に戻る手前の音形」のみで基本的には楽譜どおりです。
第1楽章ではその明るく華やかな面がよく表れています。
①序奏のテンポはゆったりめ。
譜例1の部分、弦楽器、木管楽器ともにレガート気味です。
譜例2ですが、1stヴァイオリンが弾むような演奏、オーボエはレガートとはっきりとした対比が表現されています。
独奏ヴァイオリンへの受け渡しは大げさなリタルダンドもなくスムーズです。
②第1主題提示からとにかく明るい音色が印象に残ります。
A線やE線の開放弦を使うことで、より明るい響きをだしていますね。
譜例3はスラーに近い形で、譜面どおり。
繰り返しも明るい音色の印象は変わらず少し華やかさも加わってきます。
③第2主題までの経過部は落ち着きのあるテンポ感の中にも疾走感も感じることができます。
譜例4の入り部分だけはっきりとテンポを落としており、32分音符の部分ではテンポを戻しています。
私は初見で聴いた時、拍が分からなくなってしまいました。
第2主題直前は最後まで大きくリタルダンドをかけ第2主題に入っていきます。
④第2主題でもやはり明るい音色でロマンティックにかたよりすぎません。
メロディー自体がロマンティックなため、スターンの演奏ぐらいがちょうど良いと感じます。
⑤譜例5ではとても自然にテンポを上げており、譜面どおり。
その分譜例6はテンポの変動はありません。
最後まで勢いを保って展開部へ移行します。
⑥独奏ヴァイオリンのテンポを引き継いだまま展開部が始まります。
この展開部の始まり方がとてもスムーズです。
独奏バイオリンがリタルダンドするか展開部でガクッとテンポを落とす演奏が多いように感じています。
展開部オーケストラ部分はさすがオーマンディ/フィラデルフィアといった感じで、華やかな美音です。好きです。
譜例7、テンポが安定しており一定です。
円で囲った部分も下の重音で弾き直すことなく、メロディー部分がはっきりと聞き取れます。
好みの問題ですが、私は上の音(メロディー)を重視した演奏がしっくりきます。
⑦フルートがメロディー、独奏ヴァイオリンは伴奏という立ち位置はありつつ、独奏の主張もはっきりとあります。
録音の問題かもしれません。
譜例3は提示部と同様に再現部でも譜面どおり。
そしてその後の32分音符はスピッカートではねています。
ドラマチックなチャイコフスキーを感じる名演・・・レーピン
勢いのある部分は迫力ある太い音で、チャイコフスキーらしいメランコリックな部分はとても繊細な音色です。
1楽章展開部オーケストラのトゥッティによる第1主題の強奏部分だけでも聞く価値のある演奏だと思わせてくれます。
ゲルギエフに飲み込まれることなく、レーピンもしっかりと返しているからこそのこの迫力です。
この楽章が退屈にならない貴重な演奏だと思います。