「メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲」名盤紹介!

メンコンCD クラシック音楽

ヴァイオリン協奏曲の王道であるメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲(メンコン)。

メンコンは王道であり、ヴァイオリニストにとって避けて通れない重要な曲です。
そのため様々なヴァイオリニストの録音が残されていて、いくつもの名盤が生まれています。

「ありすぎてどれを聴けばいいのか分からない」となってしまうのは当然です。

この記事では「こんな方にはこの演奏がおすすめだよ」という形でメンコンの名盤をご紹介していきます。

みなさまの好みに合う演奏があれば幸いです。

その前にメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲について知りたいと言う方はこちらの「メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲を解説!上品でカッコいいコンチェルトの王道」もあわせてご覧ください。
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上品で優雅で力強い熱演・・・スターン

Vnスターン/オーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団
とにかく熱い演奏がいいという方
とりあえずメンコンのスタンダードが聴きたいという方
最新録音じゃないと聴けないという方
ゆとりのある演奏ですが熱量はとても高い熱演です。
またテンポ、表現力とも非常にバランスがよく、メンコンのスタンダードな演奏として完成度が高いと思います。
1楽章冒頭、とても有名なあの第1主題を上品かつ感傷的に表現しています。
心に訴えかけてくる演奏でありながら、センチメンタルになりすぎないそのバランスは本当にすばらしいです。
第2主題は「穏やかに(tranquillo)」の指示通り、落ち着いていて優雅な演奏です。
コーダには入ってからギアがどんどん上がっていく感じは、とても熱量が高く気持ちがどんどん高ぶってきます。
2楽章主部の主題は優しく甘い演奏で、弱音での高音の美しさは特に感動します。
また、1楽章同様ロマンティックに寄せすぎず高いレベルでバランスが良いです。
3楽章はスターンの明るいヴァイオリンの音色が光ります。

勢いだけじゃない説得力抜群の快速テンポ・・・ハーン

Vn独奏:ヒラリー・ハーン/ウルフ指揮オスロフィルハーモニー管弦楽団
クールでかっこよいメンコンが聴きたいという方
とにかく圧倒的な独奏ヴァイオリンが聞きたいという方
ゆったりとしたテンポの重厚な、もしくは濃厚な音楽が好みの方
初めてハーンのメンコンを聴いたときの私の印象は「テンポ速すぎ!」でした。
他の演奏では聴いたことがないテンポなので違和感を感じるかもしれません。
ただこの演奏は勢いだけでヴァイオリンの技術を見せつけるというものでは決してないです。
速いテンポのクールなかっこよさはありながら、メンコンの哀愁と優雅な華やかさがきちんと表現されています。
メンコンはこのテンポで弾くべきなんじゃないかと思ってしまう説得力があります。
またカップリングのショスタコーヴィチも同様でしたが、速いテンポ設定は高速楽章だけで、緩徐楽章もかっ飛ばしてしまうということはしません。
1楽章冒頭の第1主題はテンポの速さをとくに感じます。
それでも決して冷たい印象は受けず、ヴァイオリンの高音とメロディーの美しさがダイレクトに伝わってきます。
技巧的なパッセージは速いテンポの中でも1音1音しっかりと弾かれ、改めてハーンの技術の高さを感じます。
第2主題はテンポを含めて穏やかに演奏されています。
そのため第1主題とのコントラストがよりくっきり印象付けられます。
また展開部に入ったときのギアの切り替わりは不自然なところが一切なく見事です。
展開部後半に入る前、提示部に出てきた経過主題を演奏する部分はテンポを戻すだけでなく若干あおり気味でかっこいいです。
コーダ後半、上述した「展開部中の経過主題」と同じ形が出てきますが、コーダではPiu prestoの指示があり展開部のとき以上に「グッ」とテンポを上げます。
ここでの凄まじい追い込みには圧倒されます。
2楽章の演奏時間は8分11秒で平均的なテンポです。
主部の美しい主題は、甘すぎずドライすぎずと非常にちょうどよく、ずっと聴いていられます。
中間部は2楽章の頂点に向かって多少の推進力加え、盛り上がりを作っています。
3楽章は終始ものすごい勢いで進んでいき演奏のテンションは高いです。
また、第1主題の8部音符をスタッカートの有無でしっかり弾き分けていて、それが推進力を生んでいます。
勢いは第2主題に入ってからも落ちることがないです。
コーダの盛り上がり方は他の演奏では味わえないもので圧倒的です。

カップリングのショスタコーヴィチについてはこちらの「「ショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番」名盤紹介!各演奏の特徴」もぜひご覧ください。

ゆったりしたテンポでヴァイオリンが美しく重厚に響く・・・シャハム(廃盤)

Vn:シャハム/シノーポリ指揮フィルハーモニア管弦楽団
重厚で堂々とした演奏が聴きたい方
ドイツ音楽として聴きたい方
遅い演奏をじれったいと感じる方
シャハムがまだ17歳のときの演奏です。
ゆったりとしたテンポ設定で10代とは思えない雄大で重厚なメンコンです。
全体的に音色は明るくなりすぎず大人の色気があります。
20歳となった3年後のチャイコフスキーのほうがむしろ若々しさを感じました。
曲調によってしっかり弾き分けている印象です。
1楽章の演奏時間は14分36秒でかなりゆったりとしたテンポで進んでいきます。
冒頭の第1主題から、じっくりとそれでいて音楽の流れをとめることなく重厚な音楽を作り上げています。
第2主題に入るとよりいっそうテンポを落とします。
穏やかながらも色気のある太い音色で聴き入ってしまいます。
展開部、前半は少し推進力をもって前に進んでいきますが、後半部分はやはりゆったりめのテンポとなりどっしりした音楽です。
再現部、第1主題はオーケストラによるものであるため提示部に比べるとテンポは速めで、シャハムのアルペジオもオーケストラを煽っていきます。
それ以降の経過部や第2主題は提示部と同様です。
コーダに入っても基本スタンスは変わらず、最後は追い込むように駆け抜けては行きますが重厚な音色で1楽章を締めています。
2楽章も演奏時間は9分10秒でテンポは他の演奏と比べてゆったりとしています。
主部はしっかりと時間をかけて主題を美しく崇高な雰囲気で作り上げています。
中間部は重厚です。
ほぼ独奏ヴァイオリン1本であることを考えると、シャハムの音色の深さにあらためて感動しました。
3楽章は曲調にあわせて音色も明るく華やかになっています。
とはいえ、楽観的にはなりすぎず1音1音しっかりと弾いています。
コーダは壮大で最後までまくし立てることなくきっちりと弾ききって曲を終えます。
残念ながら2020年10月4日現在は中古CDを探すしかないようです。
再販などありましたら、こちらの記事を更新したいと思っています。

ロマンティックに歌う濃厚なメンデルスゾーン・・・ジョセフォウィッツ

Vn:リーラ・ジョセフォウィッツ/デュトワ指揮モントリオール交響楽団
王道の演奏に飽きている方
とにかく濃厚でロマンティックな演奏が好みの方
スタンダードが聴きたい方
ロマンティックよりはあっさり派の方

かなり気持ちの入った演奏なのか、濃厚でロマンティックなメンコンになっています。
リズムの切れのよさ、グリッサンド、テンポの揺れ動きなどもあり色気たっぷりな印象です。
好き嫌いがはっきり分かれそうな演奏ですね。

1楽章冒頭から嫌味のないグリッサンドなど色気たっぷりの第1主題になっています。
その後の細かい3連符も弾きなおしているようなアクセントがところどころで現れて、力強く耳に訴えかけてきます。

第2主題はガクッとテンポを落とします。
グリッサンドを多用し、テンポもルバート気味に揺れを作っていてかなり濃厚な音楽になっています。

展開部に入る直前まで徐々にテンポ落とし、展開部に入ると同時に自然に元のテンポに戻ります。
テンポの落とし方が大きいので急加速したような印象を受けますがそれが自然に行われています

展開部は他の演奏以上にテンポの切り替えがはっきりとしていて、かなり気持ちを入れた演奏のように感じます。

コーダ突入時も展開部に入るときと同様、急加速したような印象です。
最後までスフォルツァンドを強調するなどしながら盛り上げ1楽章を終えます。

2楽章主部主題は嫌味にならない程度にグリッサンドをいれ、濃厚な色気満載です。

この色気は中間部や主部に戻ってからも続き、濃厚な2楽章を静かに閉じます。

3楽章も前の楽章を引き継ぎ明るく華やかというよりもかなり濃厚になっています。

また、急加速・急減速といった切り替えが何度もあります。
特に提示部、再現部ともに第2主題直前の16分音符で駆け上がる部分の急加速はびっくりします。

コーダも単純に盛り上げるだけでなく「こう弾きたい」というはっきりとした意思を感じる演奏です。

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