有名協奏曲はすべてピアノとヴァイオリンばかりで、よくてチェロぐらいですよね。
特に金管楽器のための協奏曲はなかなかありません。
今回はホルンのために書かれた協奏曲で、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲に似たとても分かり易くロマンティックな曲である「グリエールのホルン協奏曲」をご紹介します。
「ホルンの音が大好き!」「金管楽器のためにかかれた良い協奏曲はないのかな?」なんて方にぜひ聴いてほしい曲です!
グリエールのホルン協奏曲の背景をご紹介
グリエールのホルン協奏曲の完成は1951年になります。
ボリショイ劇場管弦楽団の主席ホルン奏者だったヴァレリー・ポレフの依頼によって作曲されました。
ポレフは、ボリショイ劇場で行われたグリエールのバレエ「青銅の騎士」のリハーサル中にグリエールと出会っています。
リハーサルの休憩中、グリエールと指揮者の話し合いの場に参加していたポレフはその短い時間で、グリエールと話をしました。
その会話の中で、グリエールは「管楽器のためのソロの曲を書くことがめったになかったのは残念だ」というようなことを言ったそうです。
そこで、ポレフはホルン協奏曲の作曲を依頼をしたのです。
その後、ポレフはその協奏曲についてグリエールと話し合いをしています。
その場でホルンの演奏をしたりもしたそうです。
そしてその1年後にグリエールのホルン協奏曲は完成します。
ちなみにカデンツァはポレフが書いています。
初演は1951年5月10日にレニングラードにて、ポレフ独奏グリエール指揮レニングラード放送交響楽団によって行われました。
グリエールのホルン協奏曲の曲解説
編成は以下の通りです。
独奏ホルン | ||||
フルート3 | オーボエ2 | クラリネット2 | ファゴット2 | |
ホルン3 | トランペット2 | トロンボーン3 | チューバ | |
ティンパニ | トライアングル | スネアドラム | シンバル | バスドラム |
ハープ | ||||
第1ヴァイオリン | 第2ヴァイオリン | ヴィオラ | チェロ | コントラバス |
演奏時間はおよそ25分で編成・演奏時間ともにホルン協奏曲としては長大です。
チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲をモデルとしているとも言われていますが、特に第1楽章の構造などは似ていると感じます。
オーケストラによる序奏の後に短めのカデンツァをはさんで独奏ホルンが第1主題を演奏する部分や、再現部前にカデンツァを置いている所などは同じですね。
1951年に書かれたとは思えない華やかでロマンティックな分かり易いメロディーが満載で、構成も伝統的なスタイルで書かれています。
ロマン派の協奏曲、特にチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲が好きな方なら絶対に好みの曲だと思います。
ここからは楽章ごとに曲の解説をしていきます。
第1楽章:Allegro
壮大で伸びやかなホルンと叙情的でロマンティックなホルン、対照的なホルンの音色を聞くことができます。
とても聞きやすく、グリエールが超有名作曲家であったら日本での知名度ももっと高かったんじゃないかと思います。
知らないのはもったいないそんな曲です。
第1主題とは対照的でとてもロマンティックで美しいメロディーです。
この部分のトランペットがかっこいいです。
展開部の中間にある連続した3連符の動機は明るく勇壮的で気持ちが盛り上がってきます。
最後は展開部直前に現れたオーケストラの壮大な音楽で盛り上がり第1楽章を閉じます。
第2楽章:Andante
特に主題は美しすぎて映画のワンシーンに出てきてもおかしくないです。
トリオ主題との対比がよりいっそう主題の美しさを引き出します。
1楽章から続けて聴くとホルンの音色は本当に多彩なんだと改めて感じる曲です。
木管楽器による少し楽しげなメロディーで静かに始まります。
トリオ前にオーケストラによるめちゃくちゃ甘いメロディーがあります。
トリオ終盤独奏ホルンの3連符を2つずつのスラーに分けて演奏し、その盛り上がりの頂点で主題に戻ります。
ここではオーケストラと独奏ホルンの演奏する部分がメロディー登場の時点と「逆」になります。
まずオーケストラにより主題が奏されますがここの部分がこの曲の頂点です。
その後トリオ前にオーケストラによって奏された部分がここでは独奏ホルンによって演奏されます。
そうして最後は、冒頭の木管楽器による少し楽しげなメロディーが回帰し静かにこの楽章を終えます。
第3楽章:Moderato – Allegro vivace
軽やかで弾むようなリズムの第1主題はとても楽しい気分にさせてくれます。
そして伸びやかなメロディーの第2主題は晴れ渡る青空の下、広大な自然をイメージさせる澄んだ音です。
とにかく何も考えず楽しんで聴ける曲です。
クラリネットとファゴットの「暗示するようなメロディー」によってModeratoで曲が始まり、これに金管楽器の「コラール」が続きます。
短めのコラールですが荘厳な雰囲気で、その後の動きのある主題と対照的です。
Allegro vivaceへとテンポを上げ、「動きのある主題の動機」がファゴットによって導かれます。
そこにヴィオラが加わり第2ヴァイオリンへと受け渡しながら独奏ホルンの主題提示につなげていきます。
独奏ホルンによる「軽やかで弾むような主題」はとても楽しい音楽です。
華やかなホルンの音色にマッチしていてノリノリな気分になります。
この主題が独奏ホルンとオーケストラの間を行ったりきたりしながら進んでいき、次の「伸びやかな主題」に移っていきます。
「軽やかで弾むような主題」と同様に、この主題もまずは独奏ホルンによって提示され、その後オーケストラによって演奏されます。
その後、再度冒頭の形に戻り演奏される楽器は変化があるものの同じ順番で繰り返されます。
最後は冒頭のメロディーからオーケストラの全合奏によるコラールが演奏された後、Vivace→Piu mossoへと速度を上げながら独奏ホルンが技巧的に盛り上がりを作り全曲を閉じます。
②「コラール」(金管楽器)
③「動きのある主題の動機」(ファゴット→弦楽器)
④「軽やかで弾むような主題」(独奏ホルン→オーケストラ→独奏ホルン)
⑤「伸びやかな主題」(独奏ホルン→オーケストラ)
②「コラール」(金管楽器)
③「動きのある主題の動機」(独奏ホルン)
④「軽やかで弾むような主題」(オーケストラ→独奏ホルン)
⑤「伸びやかな主題」(独奏ホルン→オーケストラ)
②「コラール」(オーケストラ)
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